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●外に向かって開かれていた居住空間日本家屋において座敷は接客のコアになる部屋だが、この空間だけをもってして日本人の接客のあり方を説明したことにはならない。鴎外・激石の家を見ると、西側の壁だけが窓もなく閉じられているが、南、東、北側には人の出入りができる場所が設けられていることに気づく。南には東西に縁側が通っている。そこからは日常的に人の出入りがあっただろう。東には玄関、そして台所に通じる勝手口があり、北側にも縁側が通っている。いまの感覚でいうと、戸締まりがたいへんだったろうと思うが、お手伝いをふくめて家人すべてがいなくなるということはめったになかっただろうから、それも無用な心配だろう。わたしが着目したのは、縁側と勝手口の存在である。まず台所に通じる勝手口である。これはもちろん、いまのプレハブ住宅にも存在している。だが激石の時代のように、外部の者が簡単に出入りできるようにはなっていない。それは住宅の構造の問題ではなく、社会のシステムの問題である。